【ここにつどいしあか】

 

 

 

陸上装甲艦タルタロス。

チーグルの森の入り口でジェイド・カーティスというマルクト軍人の命令で捕らえられたルークとティアは、抵抗する間も無く艦内の一室に収容された。

尋問は軍人のペースで一方的に進む。

世間知らずのお坊ちゃまだと言うなら、少しはわかるように説明しやがれ。

とにかく、戦争が起こりそうなので止めに行く最中だということはわかった。その途中で不正入国したルークとティアを見つけたから捕らえたということも。

軍人は、ルークがキムラスカ王室と姻戚関係にあるファブレ公爵家の一人息子、ルーク・フォン・ファブレだとわかると態度を一変させる。跪いてさえ見せる男をルークは冷ややかに見下ろした。

態度を変えても、心まで変えたわけではない。

それがこの男のプライドなのだろう。

他の選択肢など用意されていない状態で、選ぶのはおまえだと言われて、選択肢にない答えを出せる程ルークは世慣れてはいない。結局自分の思い通りになるものなど、どこにもないのだ。

外の世界も大概屋敷と変わらないのだということを、思い知らされる。

「わかったよ。伯父上にとりなせばいいんだな?」

せめてもの抵抗にと、しばらく逡巡しているふりをした後、ルークは渋々頷いた。

その言葉に満足したのか、ジェイドは艦橋(ブリッジ)に連絡してくると言って部屋を出て行く。

クイクイと腕を引かれ見下ろせば、黒い髪のツインテールが腕にぶら下がっていた。

アニス・タトリン。確かイオンの導師守護役(フォンマスターガーディアン)だったはずだ。

やたらと体をくねらせながら話すのは彼女のクセか、それとも何か悪い病気だろうか?

「よかったら、艦内をご案内しますけどぉ?」

他にやることもなかったので、案内してもらうことにする。

部屋を出てしばらく進むと随分前に出て行ったジェイドが床に膝を着いていた。

具合でも悪くしたのかと駆け寄るティアに気付いたのか、立ち上がって片手を上げてその動きを制止する。

「大佐〜。何かあったのですか?」

大声を出すアニスに、ジェイドは視線だけでその行為を咎める。

近づくな、大声を上げるな、ではどうしろと言うのだ。

ルークが痺れを切らし行動に出る前に、ジェイドは何やら足元を気にしながらこちらに戻ってきた。

「艦内で何か起きているようです」

あまりに冷静に言うから、それがおおごとだと理解するまでに時間がかかった。

「何か、とは?」

「兵士たちがいません」

本来なら扉の前には警備の兵が、今は無人の船室には待機中の兵がいたはずであると。

「艦は動いていますので艦橋には誰かいるでしょうから、私はちょっと確認してきます。皆さんは船室に戻ってください」

「大佐、一人では危険です」

「おや、ティア。私を心配してくれるのですか?」

心配するのが馬鹿らしくなる程に緊張感の欠片もない。まぁこれがこの男のスタイルだというのはわかった。それでもティアの申し出はありがたいのだろう、ジェイドは付いてくるというのを断りはしなかった。

「アニスはイオン様を。ルーク、貴方はどうしますか?」

「一緒に行くよ」

恐怖がないわけではない。しかしルークだってここで何が起こっているのか気にならないわけではなかった。どちらに行っても危険だというなら真相を知る方を選ぶ程度の好奇心は持ち合わせていた。

「大佐、これは?」

壁の凹みを見つけ、指差す。

「あぁ、これは二週間前に馬鹿共がここで喧嘩した時にできたものですね。急な出発で修繕が間に合わなかったもので。いや〜お恥ずかしい」

手懸りではなかったらしい。

その後も小さな傷や染みを確認しながら進んでいく。

驚くべきことはジェイドの記憶力だ。何日前にできた何と、一つ一つ今回のこととは無関係であると説明していく。もっともその記憶が正しいかどうかなど証明できるものではないが。

「まるで、『天空のマリア』号ですね」

「何だ、それは?」

「おや、ご存知ありませんか?子供向けの怪奇本などによく載っている幽霊船の話ですよ。海上で発見された船には争った痕跡など一切なくただ船員だけが消えていた、と。わりと有名な話ですよ」

ティアは知っているようだった。

ルークも記憶を失う前に読んでいたかもしれないとは思ったが、それは今のルークには読んでいないと同義だ。屋敷に戻ったら探してみよう。無事に帰れるだろうか。

ジェイドは先程蹲っていた場所に着くと再びしゃがみ込む。

「大佐?」

床に僅かに残された赤黒い汚れ。ふき取ったような跡。

「血のようですね」

既に変色を始めたそれは所見だけではいつついたものか判断できそうになかった。

「やはり、何かあったようです」

「それは以前からあったものではないのですか?」

「えぇ。あなた方とこの艦に戻ってきた時にはなかったものです」

その淡々とした物言いは、それが真実であるように感じさせるから不思議だ。確かめる術がないのがなんとも残念である。

「よく覚えていますね」

「自宅の染みを覚えているのと同じですよ」

簡単なことだと言うジェイドに二人は即座に否定する。

「覚えていません」

「屋敷に染みなんてねぇ」

前者はティア。どこかずれた答えはルークである。ここはつっこむべきだろうか?

しかしそんな暇はないようである。

「不用意に進んではいけません」

「その通りだ。―――おとなしくしていてもらおうか。死霊使い(ネクロマンサー)ジェイド」

ジェイドの忠告は大鎌が空を切る音で掻き消された。

甲板へ続く昇降口(ハッチ)から現れた大男は、ルークの喉元にその刃を突きつけてはいたが、視線はジェイド一人に向けられている。

「私も随分と有名になったものですね」

なにやら話し込んでいるようではあるが、ルークの意識は自分の首に触れるか触れないかの位置で揺れる鋼にのみ囚われていた。

眩い閃光。鈍い金属音。

不意に体が自由になる。むせ返るような血の臭い。

「刺した・・・」

広がる赤が、ルークに今起こった出来事を伝えている。

それでもルークは目の前の出来事を受け入れられず、呆然としていた。

「行きますよ」

しかし前を行く二人はそれを平然と受け止める。

ジェイドの平素と変わらない歩み。ティアの冷たい一瞥。付いてこなければ置いていくと言われているようなものである。

ルークは震える足を叱咤して二人の後を追った。

付いていくより他、道はないのである。

 

 

 

艦橋の入り口前には見張りの兵らしきものがいた。

見覚えのある軍服。

「あれは、マルクト兵ですね」

「カーティス大佐」

ジェイドの姿を認め敬礼はするが、入り口前を空ける気配はない。

中に入れるわけにはいかない、と。

理由は言えない。ただ、争うつもりはないのでおとなしくしていてほしい、と。

「ティア、譜歌を」

同じマルクト兵は殺せないということだろうか?先程黒獅子ラルゴと対峙していた時とは大違いだ。

ルークの疑問に気付いたのか、ジェイドはニッコリ笑って聞かれてもいないのに答える。

「殺してしまっては、後で色々話してもらえなくなってしまうでしょ」

笑顔なのが余計怖い。

教えて欲しくなかったとルークが思っても無理はないだろう。

後で尋問されることになったマルクト兵が、譜歌で眠らせていてジェイドの笑顔を見ずに済んだことは、不幸中の幸いだったかもしれない。

「さて、この奥に何が待っているのでしょう?」

楽しみですねぇと、無駄に爽やかな笑顔を残して艦橋に乗り込んでいくジェイド。ルークを心配しつつも後に続き扉の向こうへ消えたティアの後姿を見送り、ルークは詰めていた息を吐き出す。

静かだった。

自分の他に動く者がないという状況。

戦わなくて済む。

そう思っていた時だった。

「うっ」

小さなうめき声と共に起き上がるマルクト兵。寝ぼけているのか、焦点の合っていない目をルークに向けて、近づいてくる。

恐怖に突き動かされて、ルークは剣を抜いていた。

「く、来るな」

人間に真剣を向ける恐怖に切っ先が揺れる。

切ろうとしたわけではないが、兵の腕に触れた白刃が赤く染まる。

その赤は更にルークの心を追い詰めた。

「うわぁあ!」

叫び声。

響く金属音。弾かれた剣が宙を舞い、甲板に落ちる軌跡を眺めながら、ルークは殺さずにすんだことに安堵していた。

「―――剣なんて捨ててしまえ」

その声と共に腹、そして一瞬遅れて後頭部に衝撃を受ける。

紅―――血の色に似てはいたが、明らかにそれとは違う赤。

薄れ行く意識の片隅で、確かに見たはずなのに。ルークがそれがなんであるか認識することはなかった。

艦橋の入り口で起こった喧騒が扉越しに聞こえたのだろう。

「ルーク!」

慌てて飛び出してきたティアは、壁に頭を打ち付けて倒れるルークの姿を認め駆け寄ろうとするが、それは叶わなかった。

首筋に衝撃を受け、意識を手放す。

ジェイドは見ていた。

男の翡翠の双眸は、今は閉じられているが同じ色を持つ青年に向けられていた。

「これは、どういうことだ」

切っ先をルークに向けたまま、その声に答える者はない。

振り上げた剣が光を弾く。

しかしジェイドが出て行くよりも早く、それを制止する女の声が響いた。

「そのようなことは望まれていません」

言葉と共に向けられた女の剣。しかし紅はその刃を片手で軽く往なす。

「恐怖を捨ててしまっては人にあらず。そのようなモノになさるおつもりですか」

振り上げた剣は血に染まることなく鞘に戻っていった。

「船室にでも閉じ込めておけ」

それっきり興味をなくしたとでもいうように、紅はルークたちに背を向けた。

無防備な背中を見せられたとはいえ、形勢逆転を狙えるいう状況ではない。

「貴方が止めてくれるなんてね」

「この程度の命令一つ満足にできないのなら、ついてくるべきではなかったのよ。リグレット」

リグレット―――魔弾のリグレットか?―――はその名の由来ともなった譜銃を腰のホルスターに戻しながら、駆けつけてきた神託の盾(オラクル)兵に護送命じる。

そのすべてをジェイドは見ていることしかできなかった。

もう一つの紅に、自身の罪を揺さ振られたことは、ジェイドのみが知るところである。

 

 

 

この数日間で、目を覚ますと違う場所という経験は二度目だった。

人生にそういうことはいったい何回起こることなのだろうか?

心配そうに覗き込んでくる天色(セレストブルー)に、起きたらすべて夢でしたなんて都合がいいことは起きないことを思い知る。

ジェイドとティアはここから脱出しイオンを救出するということで意見を一致させた。

そんなことをしたらまた戦いになる。

今度こそ本当に人間を殺してしまうかもしれない恐怖にルークは反対するが、もちろん聞き入れられるわけがない。

死にたくなければ戦え。

選択肢が一つしかない選択は、選択とは言わない。それでも選んだのはおまえだと、その赤と青の二対の瞳は雄弁に語った。

「静かに」

カツンカツン、と。足音が近づいてくる。

耳を澄ませば、話し声も聞こえてくる。

「早かったな」

「守備は?」

「ばっちり。リグレットに気付かれないようにするのは苦労したけどな」

声は三人分。何故かそのすべてに聞き覚えがあるような気がした。

「こっそり行くからだろ?」

「えぇ〜。秘め事ってのはこっそりやるものでしょ」

この場にはふさわしくない明るい声が当たりに響く。聞かされている方としては苛立ちを増徴させる物でしかない。

鋼鉄の壁で囲まれた船底の牢屋。

「これを船室と呼ぶなら、俺は世の中の常識を疑うぞ」

「大丈夫、絢爛豪華な客室にしか見えない牢屋だって存在するから」

何が、大丈夫なのだろうか?

答える声は響きどころか内容さえ場違いである。

扉に取り付けられた小さな鉄格子から覗くと、金髪の女と銀髪の男。三人目はそれが偶然か計算されたものであるかはわからないが、姿を確認することはできなかった。

金色は先程紅を止めた女だった。

銀色にも見覚えがある。

「あんたは・・・」

格子越しに銀色と目があった。

「チーグルの森以来だなぁ〜。お坊ちゃん」

「誰が坊ちゃんだ!」

「そう吼えるなって」

この扉が開くなら、殴ってやるのに。

戦闘能力の差も忘れてそんなことを思う。

銀色はむきになるルークの態度を楽しんでいるのだろう。ニヤニヤしながらこちらを見ていた。

そんな男の態度を咎めるように、女の声で制止がかかる。

「馬鹿を馬鹿にして何が悪い」

「馬鹿なのがわかっているのなら、わざわざ馬鹿にしなくてもいいのよ」

「おまえらなぁ〜」

呆れたような声は言い合う男女よりは幾分若い。

「ほどほどにしとけよな、二人とも」

遠ざかる足音は一人分のみ。

扉の向こうで何が起きているのかは断片的にしか知ることができないもどかしさにイライラする。

ここから出せと怒鳴りつけてやろうと思ったところで、体が後ろに引かれた。

ルークを押しのけジェイドが前に出る。

小さな窓だ。人一人顔を覗かせるのが精一杯であるのだから、しかたない。

交渉役なら確かにジェイドの方が相応しいだろう。

「尋問、ですか?」

「問わなきゃならないことなんてないわ」

「では何故ここに?」

「見たいとおっしゃったから、お連れしただけよ」

そう言ったのは一人だけ姿を確認できなかった人物なのだろう。

本当にただ見たかっただけのようである。

その証拠に既にここにはいない。

「それに、この艦を壊されては困るのよ」

先程までのやりとりが聞こえていたわけではないだろう。足音が聞こえてきた時点で脱出についての話は止めたはずだ。

「何のことです?」

「そのポケットの中の物と、艦を敵に奪われた時のための備え」

ジェイドは顔色一つ変えずに「なんのことでしょう?」と両手を上げてみせる。

「え〜、だってないわけないでしょ。秘密基地と隠し通路は男のロマンなんだから」

「その理屈で行動するのはどうかと思うわよ?」

呆れたようにため息をつく金色。

「無いのか?じゃあ、俺作っていいかな?っつうか、ダメって言われてもこっそり作るから、秘密基地なんだけどな」

とりあえず非常停止機構と、艦橋(メインブリッジ)以外にも操縦できる部屋を作って、停止と同時にそっちが優先されるようにして・・・

楽しそうである。

「お願いだから、それ以上は止めて。遭難者が出るわ」

隠し通路云々と言い出したところで、本気で改造計画を練り始める銀色を力ずくで押しのけ、金色が進み出る。

「我々もいつまでもここにいるわけにはいきませんので」

交渉相手が変わったところで、ジェイドは話を本筋に戻そうとしてみる。

「あなたが何もしなくても艦は止まるわ。扉も開けましょう」

「あぁ、それなら大丈夫。そろそろ減速するはずだし、あと十数分もすれば止まる」

その確信めいた物言いに、ティアが首を傾げる。

「預言士(スコアラー)ですか?」

「預言(スコア)で分単位のことがわかったら便利だよなぁ〜」

「鍛えてみたらどう?」

「俺って努力が嫌いなんだよねぇ〜」

いくらなんでも分単位は無理だろう。あの稀代の天才譜術士ユリア・ジュエの預言でさえそこまで細かいものはないのだ。

そもそも努力で預言士になれるものなのか?(なれます素質があれば)

「さっきまで一緒にいたんでね。預言士じゃなくても想像はつく」

「一緒にではなく、ストーカーしていただけでしょ」

「ひどいよなぁ〜人を犯罪者のように」

犯罪者だろうが。

「ようにではなくて、犯罪者じゃないですか!」

ティアの言葉に男は器用に唇の端を持ち上げた。犯罪者扱いされたというのに、怒る様子はない。

「そいつはお互い様。俺らから見たら、イオン様を攫った悪者は、あんたら」

「イオン様はご自分の意志で・・・」

「自分の意志でこっそり抜け出した、ってのは公式の場では通用しないんだよ。ルーク・フォン・ファブレがキムラスカの公式発表ではマルクトに誘拐されたことになっているようにな」

「私たちは誘拐なんて・・・」

「あぁ、今回のことじゃないぜ。そのへんそっちの坊ちゃんに聞けよ。自分のことだから知っているだろ」

そうして今度はジェイドとティアの後ろにいるルークに目を向ける。

「で、坊ちゃん。そっちの軍人の言うことも事実だ。マルクトではそういうことにはなっていない。一方から見ているだけでは真実はわからねぇんだよ。だが、人間の目は一度に二極から見るようにはできていない。自分がもう一人いりゃぁ別だろうけどな」

その言葉には何か別の意味が含まれているようだったが、ルークにはわからなかった。

気付ける可能性があるとすれば、ジェイドだけだろう。

甲板で紅を見た時と同じように表情を曇らせるジェイドを、男は満足そうに眺める。

ジェイドはその男の視線から逃れるように、女の方へ目を向けた。

「我々を逃がすというのですか?」

「死霊使い殿相手に身体検査なんて無意味。男のロマン説に貴方が当てはまるとは思わないけど、貴方はなんらかの切り札を持っていると確信しているわ。私の知っている死霊使い殿がそれぐらいの手を打ってないとは思えない。貴方をこの艦に乗せている限り、いつその手を使われるかわからない。そんな危険を冒すぐらいなら艦から降ろしてしまったほうがいい。暴れられる前に棄ててしまえば艦が傷つくこともないわ」

「この艦がよほど必要と見える」

「必要なのかしら?欲しいとおっしゃられたから、手に入れてみせますとお答えしたのだけど」

「だぁ〜から、男のロマンだって。車・船・飛晃艇。そして秘密基地」

なぁなぁ。改造してもいいよな。

「貴方にあげるために奪うんじゃないわよ」

「大丈夫だって。反対しないだろうから」

「そうね。反対はしないでしょうね。むしろ一緒になって色々しそうよね。そして自分で迷うのだわ。えぇ、目に見えるようだわ」

額に手を当てて天を仰ぎ見る。

「止めるつもりだろ」

「えぇ止めるわ。どんな手を使っても阻止してみせるわ」

「どんな手使う気だよ」

勝ち誇った笑顔。

「泣き落とし」

「うわぁ〜。最強だな」

放っておくといくらでも話は横道にそれる。

こちらの冷静な判断を奪うために、それが半分はわざと行われていることに気付けるのはジェイドだけだった。残り半分は多分素なのだろう。

「つまりタルタロスは誰かへの貢物なのですか?」

「カッコいいよなぁ〜。自分で動かせたら楽しいだろうなぁ〜とおっしゃっていたのですもの」

そんな理由で奪われるのか?

憐れタルタロス。

「さて、そろそろかな?」

男の呟きを合図としたかのように、艦の振動と鋼鉄の壁越しに聞こえてくる音機関の音が変わった。

「言っておくがな、タルタロスはついでだぞ。俺の本命はイオン様」

そういえば、チーグルの森でそんなことも言っていた。この数分のやり取りで完全に忘れていたけれど。

「それじゃ、俺はお出迎えに行こうかな」

そしてまた一つ足音が遠ざかっていく。

残されたのは金髪の女。

「鍵は開けておくわ。艦が止まったら、好きにしていいわよ」

「その前に貴女を倒して出て行くという選択肢もありますね」

「残念ね。封印術(アンチフォンスロット)がなければ勝機はあったかもしれないけれど。犬死したいのならお付き合いするわよ」

それぐらいの時間は残されているから、と。

女の瞳に冷たい光が宿る。

「冗談ですよ。そちらの指示に従いましょう」

「賢明な判断だわ。死霊使い殿」

そして最後の一人が背を向ける。

その足音が聞こえなくなる頃、艦の振動も僅かに聞こえていた音機関の音もしなくなった。

彼女たちの予想通り、タルタロスが停止したのである。

 

 

 

 

 

―――――――――

あとがき(という名の言い訳)

 

ここに集いし―――集っていません()

いや、全員タルタロスにいるということで・・・

相変わらずオリキャラたちが出張っていますが、とりあえず完全オリキャラで自己主張の強いキャラはこれで終わりです。

あとはゲームで登場しているけど影の薄かった方など勝手に捏造しているだけで(オイっ)

 

金・銀・黒って何処かの天使たちみたいですね。まぁ大好きな話なので影響がないとはいえないですが、色だけです。

戦闘能力は、金>銀>黒。紅は金と同じぐらいかな?

ジェイドは現在Lv.5なので、思いっきり引き離されて最弱です。

3対1でも絶対に勝てません。まぁそれがわかっていたからあの場は引いたのでしょうけれど。

 

天空のマリア=幽霊船マリー/セレスト号。

船の名前が考えつかなかったので、そのまま使用。

ご存知の方も多いのでは?

もちろんアビスには無関係(あたりまえ)

 

ところで、アビスの世界に車ってあるのか?まぁいいか。

 

ではでは。

徐々に過去の話も書いていきますので、オリキャラたちの話はそこで補完してください →無責任な(苦笑)

 

 



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